2001/11/14

隔月刊ボードゲーム通信7号

ボードゲーム通信社
(BOARD GAME NEWS AGENCY)

エル・グランデ エキスパンションセット「K&I」研究
El Grande - Study for Expansion Set: "K&I" -

「エルグランデ」は、我が通信社の中で数多くプレイされるゲームの1つです。これまでにも、隔月刊の第1回、2回、4回の中で、エルグランデの必勝法を紹介してきました。
シンプルなルールはもちろんのこと、質感がある木製の駒、カードとゲーム盤のイラスト、何故か段違いに組み立ってしまうタワー(とても気に入っています)等が、これほどまでに愛着を感じさせ、息を長く続かせるための手助けをしているのでしょう。

「エルグランデ」が発売された後、2つのエキスパンションセットが登場しました。それぞれ「王と参謀(K&I)」と「異端審問官と植民地(G&K)」です。今回は、エキスパンションの1つである「王と参謀(K&I)」の特徴について説明し、特徴を生かした必勝法を考えていきたいと思います。なお、K&Iでは2〜3人用のプレイと4〜5人用のプレイではスーパーアクションを扱うルールが一部異なりますが、今回は5人用プレイを前提に話を進めていきます。



オリジナルとK&Iの違いについて

1) パワーカードとアクションカードの組み合わせが違う

オリジナルでは、場に出ているアクションカードと、プレイヤーが持つパワーカードを中心にゲームが進んでいました。このため、全てのプレイヤーがパワーカードを出した後でも、各々のプレイヤーがどのスーパーアクションを選ぶが判らないことから、戦略を立てることが難しいことが多くありました。

しかし、K&Iではこのアクションカードとパワーカードを組み合わせたカードを用いることになりますので、スーパーアクションが処理される順番も一意に決まります。その結果、じっくりと戦略を立てることができるようになりました。代わりに、騎士を配置できる数とアクションカードが独立しました。(左図参照)

2) スーパーアクションの内容が変化する

K&Iでは、スーパーアクションがパワーカードの手札に含まれているため、自分がやりたいスーパーアクションを選んでパワーカードを出すことが出来るようになりました。しかし、パワーカードの一番大きな数字を出したプレイヤーのスーパーアクションはパワーカード180のキングカードに、一番小さな数字を出した場合はパワーカード10の参謀カードにそれぞれ変化するルールが付きました(下図参照)。この時、元々カードに記されていたスーパーアクションは無効になりますので、変化することをよく考えてカードを出すことが必要になりました。

3) ゲームで使うパワーカードをプレイ開始前に選ぶ

K&Iではパワーの一番強い180から一番弱い10のカードまで10おきに計18枚のカードがあります。しかし、プレイヤーはこれらのカードを全てゲームに利用することはできず、ゲームの開始時に18枚のカードの中から13枚を選び出さなくてはなりません。つまり、残りの5枚はゲームで使うことができなくなります。

以上の特徴を考慮しながら、必勝法の材料を探していくことにしましょう。


必勝法の材料

ゲームの開始前に、有用なカードを13枚選び出そう

カードを選ぶにあたって、カードの種類を「キング系」「得点系」「参謀系」の3つに分けて考えることにします。

「キング系」… キングを動かすことができるカードです。
「得点系」… 得点計算ラウンド以外で得点を得ることのできる、
もしくは得点に大きく影響を及ぼすカードです。
「参謀系」… 騎士や大公に影響を与えるカードです。

さっそく、カードの内容を見ていくことにします。プレイ経験から得た採点とカードの使い方についてのコメントを添えてみました。要点だけをつかみたい方は、赤字の部分を読んで下さい。

パワー
(騎士の数)
スペシャルアクション
の内容
カード
の種類
採点とコメント
180 (0) キングを任意の領土へ移動する
(自動的にキングカードとなる)
キング系 ★★★
任意の領土に騎士を配置することができる点で強力なカード。オリジナルでは、3・6・9ラウンドで利用すれば、騎士を配置した領土にキングを置いて得点を稼ぐ可能性が高かったカードであったが、今回は160のパワーカードが他のプレイヤーに利用される機会があるため、注意して利用したいところ。
170 (0) 得点計算を行いたい領土について主張を行う。その後で、すべてのプレイヤーは秘密ディスクで領土を1つ選択する。複数のプレイヤーが選択した領土すべてについて得点計算を行う。 得点系 ★★☆
自分が選択した領土が必ずしも得点対象にならないため、ギャンブル性が高いカードである。180のキングに化けさせるつもりで利用したい。
160(0) キングを隣接する領土へ移動する。 キング系 ★★★
相手が、180のカードを使ってキングの位置を動かした後でも、キングの最終的な位置を決めることができるため、全カードの中で一番強いといえる。是非3・6・9ラウンドで使いたい。
150(1) 任意の領土を選択し、得点計算を行う。 得点系 ★★★
得点カードの中ではパワーの数字が一番大きく、他のプレイヤに騎士を配置される可能性が少ない点で有効。
140(1) すべてのプレイヤーが所持する騎士を2個づつ、タワーへ移動させる。他のプレイヤーは領土内の騎士が移動対象となるが、自分の騎士は手元も移動対象に含まれる。 参謀系 ★★☆
タワーに騎士が溜まり込むカードである。自分は他のプレイヤーと比較して2個余分に騎士を場に配置できる点で少しだけ有利。
130(2) 領土カードを1枚選択し、自分の前に伏せておく。選択された領土は、次の得点計算ラウンドにて2倍で計算される。 得点系 ★★☆
必ず3,6,9ラウンドで使用すること。他のラウンドで利用すると、その後のラウンドで他のプレイヤーにこのカードを使用された場合、自分が選んだ領土カードが相手プレイヤーに判ってしまうのが難点である。
120(2) スコアの最高得点が「5」である領土すべてについて得点計算を行う。 得点系 ★☆☆
このカードを出してから行動をとる順番が後ろの方である場合、他のプレイヤーが騎士を次々と配置する機会があるため、得点が満足に取れないことが多い。
110(2) タワーの得点計算を行う。 得点系 ★☆☆
上と同じ
100(3) スコアの最高得点が「4」である領土すべてについて得点計算を行う。 得点系 ★☆☆
上と同じ
90(3) 移動可能なスコアボード1つを、任意の領土へ配置する。 得点系 ★★☆
このカードは、得点を確実に取れるように3・6・9ラウンドで利用したい。
80(3) 自分の大公と騎士3個を任意の領土へ移動させる。 参謀系 ★★☆
得点計算の調整ができる点で威力が大きいカードである。
70(3) 他のプレイヤーすべてについて、保有する騎士をそれぞれ1つづつ選択し、ストックへ移動させる。 参謀系 ★★☆
騎士が1人づつしか移動させることが出来ない点は効果が小さいが、移動対象の騎士を自分で全て決めることが出来る点は有用である。
60(4) スコアの最高得点が「6」ないし「7」である領土全てについて、得点計算を行う。 得点系 ★☆☆
このカードを出してから行動を取る順番が後ろの方になりがちであるため、他のプレイヤーが騎士を次々と配置する機会があるため、得点が満足に取れないことが多い。
50(4) 他のプレイヤーは、手元あるいは領土内にある騎士を3つ選択し、ストックへ戻す。このカードを使用したプレイヤーの左隣から時計回りで実施すること。 参謀系 ★★★
騎士の数を3つ減らすことが出来る点はかなり強力である。特に3・6・9ラウンドでは相手の駒を片付けた後に自分の駒を置くことができる点でゲームを有利に進めることができる。
40(4) 今回のラウンドに限り、他のプレイヤーが実行しようとしたスペシャルアクションを1回、任意のタイミングで防ぐことができる(通常のアクションは阻止できない)。 その他 ★★★
オリジナルでは利用する機会が少なかった拒否カードも、今回はかなり使えるようになった。ぜひともキング移動や得点計算の阻止に役立ててもらいたい。
逆に、他のプレイヤーがこのカードを使ってきた時は、できるだけ参謀カードに化けさせた方が良い。
30(5) 他のプレイヤーは、手元にある騎士全てをストックへ戻す。 参謀系 ★★☆
他のプレイヤーが騎士を手元にたくさん置いているときに威力を発揮するカード。しかし、行動の順番が遅くなる可能性が高いことと、参謀カードに化ける可能性が高いため効果は少ないかも。
20(5) 自分の騎士を騎士カードの数だけ、任意の領土へ配置することができる。 参謀系 ★☆☆
任意の領土へ配置できる優れたカードだが、このアクションが実行できる際の騎士を配置する数は2ないし1であるめ、あまり効果はない。むしろ、参謀カードに化ける可能性が高く、その方が利用価値が高かったりする。
10(6) 領土を1つ選択する。その領土内にある他のプレイヤーの騎士を1つ移動するか、もしくは自分の騎士全てを任意の領土へ移動することができる。(自動的に参謀カードとなる) 参謀系 ★★☆
タワーからの遠征等で、一つの領土に集中した自分の騎士を、複数の領土へ分散させることが出来る点でかなり強力なカード。

上の表を見ますと、パワーカードを数字の順番に並ると、カードの種類が偏っていることが判ります。よって、各ラウンドの流れはおおよそ、
の順番になる傾向があります。

「キングカード」は、パワーカード180と160があります。キングを動かすカードはこの2種類ですが、この他にも場の中で一番数字が大きいパワーカードが自動的にキングカードに変化することを考えますと、毎ラウンドでキングカードが出現する点に注意する必要があります。特に、パワーカード160のカードは、ラウンドの中で必ず最後にキングを動かすことが出来る点において、得点を確実に取ることができるためかなり強力なカードといえます。

「得点系カード」は、パワーカードの数字が170、150と大きい時は、他のプレイヤーに騎士を置かれることなしに安心して点数を稼ぐことが出来ますが、130以下になると他のプレイヤーに阻害される可能性が高くなります。また、パワーカードの数字が小さい騎士を配置する数も減るため得点獲得に向けての調整が難しくなりますので、このカードの利用には注意が必要です。

「参謀系カード」を利用する時は、プレイヤーの中でも順番が最後の方になるため、得点に結びつけることができるよう騎士ないし大公を動かすことに専念して下さい。特に、得点計算ラウンドの前では全神経を集中してプレイして下さい。

以上のことから、キング系カードおよび参謀系カードをメインに、得点系カードを織り交ぜる持ち札を構成することをお勧めします(例:採点が★★★もしくは★★☆となっているカード13枚)。


パワーカードを出す順番

ラウンドが始まると、各プレイヤーはパワーカードを順番に出していきます。このとき、場の中で一番数字が大きいカードと小さいカードが、それぞれキングカードと参謀カードに変化します。この変化を予測してカードを出しやすいのは、カードを出す順番が出来るだけ後ろの方のプレイヤーになります。つまり、最後にカードを出すプレイヤーは、カードの数字の並びを決定できる点でかなり有利な立場にあります。
例えば、順番の早い段階で30〜50のパワーカードを出した場合、あまりにもスペシャルアクションの内容が強力すぎるため、他のプレイヤーがパワーの数字をうまく調整されてしまい、参謀カードに変化してしまう可能性が高くなります。


しかし、カードを出すのが一番最後であり、既に場に10や20などのカードが出ている場合は、スペシャルアクションの効果を維持しつつ30〜50のパワーカードを出すことが出来ます。


このような状態をできるだけ多く得るためには、自分の左隣のプレイヤーからカードを出してもらうようにすれば良いことになります。つまり、参謀系のカード(パワーの小さいカード)をよく出すプレイヤーを自分よりも左側に座ってもらう必要があります。この必勝法だけは、ゲームを何度もプレイして各プレイヤーの特徴を掴むしかありません。そして、席に座るときにさりげなく場所を選んでしまいましょう。


まとめ

これまでに述べてきた必勝法をまとめてみたいと思います。
  • パワーカード160のカードは、キングの位置を決定する最後の切り札として使う
  • パワーカード130のカードは、必ず得点計算の直前ラウンドで使用する
  • 得点系カードを使うときは、パワーカードの数字が大きいカードを出す
  • 自分が出したカードのスーパーアクションを実行するためには、パワーカードの小さい数字を良く出すプレイヤーの右隣に座る

あとは、全てのプレイヤーがパワーカードを出した時点で、スーパーアクションが処理される順番が決定されるため、自分だけでなく相手プレイヤーの手を読みながらプレイすることに努めて下さい。それでは検討を祈ります。



〜 遊ぶ楽しさ、紹介する楽しさ 〜 Fun to Play, Fun to Introduce

私自身、このゲームが気に入っていることもあり、エルグランデとエキスパンションセットを揃えてしまいました。ボードゲーム通信社で、慣れ親しんだ人とプレイするのも楽しいですが、ボードゲームの経験がない人に何度か進めてプレイすると、これまでとは違ったプレイを楽しむことが出来ます。今までの経験では、エルグランデは初めてプレイされる方にもかなりの好評を得ています。

また、エルグランデはルールがシンプルなこともあって、ルールの説明がしやすいゲームに仕上がっています。このゲームを初めてプレイする人が参加する場合、初めに基本ルールの説明を7〜10分程行います。あとは、各ラウンドでアクションカードが出てきますので、その都度説明していきます。その結果、ゲームに取り掛かるまでの時間が非常に短く、初めてのプレイヤーがいても、すぐにプレイへ導入できる点に加え、ゲームを紹介する行為自体が楽しくなってきます。また、初めての人でもプレイがしやすいように、カードに日本語訳を記したシールを作成して貼り付けて遊んでいます。「夕食後に1ゲーム」とまではいかなくとも、こういった条件は幅広い層が受け入れるための必要不可欠なことなのかもしれません。

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発行 ボードゲーム通信社



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