2000/10/10

隔月刊ボードゲーム通信2号

                  
エルグランデ G&K(異端審問官と植民地)研究
   EL GRANDE Grossinquisitor & Kolonien
 

 「エルグランデは愛とロマンと陰謀渦巻く運試し」 (M.T.)
 

 このように言われるエルグランデの、「ロマン」の方向性をさらに高めたのが、エルグランデG&Kである。

 主な追加点は、新領土、異端審問官、6と7のアクションカードである。
 異端審問官となったプレイヤーは、4つある宗教騎士団を自分の騎士に数えることができる。
 新領土にはフランス(AragonとKatalonienに隣接)、船(沿岸領土に隣接)、アメリカ(黄金を産出)、地中海(商品を産出)があり、それぞれ領土の得点もある。黄金と商品はスペイン本国に持ち帰る(略奪する)と、黄金は6点、商品は4点獲得できる。また、アメリカには領土得点以外にも新世界総督の地位(5点)もある。

 新しいアクションカードには7-3のように、一気に大量得点ができるアクション、7-6以降の得点計算のアクションなどがある。また、7のアクションカードを選択することで、黄金、商品の配置が行われる。

 G&Kでは得点できる要素が増え、インフレを引き起こしている。今までの勝敗ラインである100点を大きく越えなければ、勝利は難しい。いまだ確たる戦略は明らかになっていないが、領土・タワーの得点に固執するだけでなく、新ルールに対応した柔軟な戦略が必要だろう。
 



 

エルグランデ G&K・カードリスト
 

<6のアクションカード>

† 全1枚  “異端審問官”のみ。このカードはゲームを通じて捨て札にはならない。

6-1 “異端審問官”  A  1枚  騎士:3
      異端審問官コマを手元に置く。黒色の宗教騎士団を2個まで、キングの領土以外で
  自由に動かすことができる。異端審問官コマが手元にある場合(このアクションカー
  ドを選ばなくても)、リザーブからの騎士の補充か、手元から領土への騎士の配置を
  1個余分に行うことができる。また、得点計算時に宗教騎士団は異端審問官コマを手
  にしているプレイヤーの騎士として計算する。
 

<7のアクションカード>

† 全11枚  カードを選択すると、スペシャルアクションを使用しなくても、黄金か商
      品が新大陸、地中海に配置される。これを取れるかどうかで、得点はかなり
            違ってくる。投入できる騎士数は2人か3人。

7-1 “制限タイル”  B  3枚  商品:2 騎士:3
      制限タイルを移動させることができる。タイルに乗せる騎士はタイルを動かした人
    が決定する。タイル上の騎士を移動させることが難しいため、後半に威力を発揮する    
  カード。敵騎士をタイル外に配置し無力化できる。3枚あるので出現率も高い。

7-2 “大公の追放”  C  1枚  黄金:1 商品:1 騎士:3
      敵大公をタワーに入れることができる。タワーでその大公が1位の場合、大公の2
  ポイントボーナスが与えられる。大公はタワーの騎士を移動させるときに、同時に移
    動するため、敵にポイントを余分に与えてしまう可能性も高い。出現する黄金、商品
    の奪取が絶対必要。

7-3 “自分の騎士を3個まで移動”  A  1枚  黄金:1 商品:2 騎士:2
      同時に配置される黄金と商品が確実に獲得できるため、8・9ラウンド以外の場合
    14点を確定できる。1のアクションカード同様、便利なカード。

7-4 “ダブルアクション”  B  1枚  黄金:1 商品:1 騎士:2
      敵プレイヤーの行ったスペシャルアクションを、その直後に行える。いつでも使う
  ことができる。しかし、このカードを持つと、“キングの移動”や“異端審問官”の
  ような強力なアクションは誰も行わず、抑止力となることが多い。また、これを選ん
  だラウンドで何もアクションをせずに、後回しにすると考えると、プラスマイナスゼ
  ロという考え方もできる。7のアクションカードをコピーすると、黄金・商品の配置
  もされる。

7-5 “アクションカードを裏返す”  C  1枚  黄金:1 商品:1 騎士:2
      裏返されたアクションカードはそのラウンド中使うことができない。しかし、次の
  ラウンドには表に戻される。このカードは後のラウンドで使うこともできる。積極策
  の多いG&Kにおいては、黄金が出現することの方が魅力か。

7-6 “得点計算(異端審問官)”  C  1枚  黄金:1 商品:1 騎士:2
      異端審問官コマを受け取り、宗教騎士団の存在する全ての領土で得点計算を行う。
    宗教騎士団の配置はかなり流動的な上、このカードは1枚しかないため、ほとんどあ
  てにできない。
                            
7-7 “新領土の得点計算”  B  1枚  商品:2 騎士2
      全ての新領土(フランス、船、アメリカ、地中海)で得点計算を行う。新領土の中
  でも、フランスの大使、公使とアメリカ新世界総督は移動のアクションカードでない
    と奪われないため、常に騎士を送り込んでおきたい。

7-8 “1領土の得点を次ラウンドの終了時に計算” B  1枚  黄金:2 騎士:2
      指定された領土について、次のラウンドの終了時に得点計算する。次のラウンドの
  直後がスコアラウンドの時は、得点計算をする前に指定領土の得点計算を行う。9ラ
  ウンド目に使われたときは、最後の得点計算の後に、指定領土の得点計算を行う。か
  なり騎士数で勝っている領土を選んでも、泥沼化する可能性がある。出現する2つの
  黄金も重要なポイント。

7-9 “得点計算前に自分の騎士を2個まで移動” A  1枚 黄金:1  商品:1  騎士:2
      次のスコアラウンドでタワーの騎士の移動後、自分の騎士を2個まで自由に移動さ
  せることができる。同点、1点差の領土や空白地などが狙える。投入騎士数が2と少
  ないのが弱点。
 
 


エルグランデ戦術MEMO 2

・ペイ理論

 混沌の支配するエルグランデ世界に、秩序の光明をもたらすかにみえる、戦略級理論。
要約すれば、ある領土に対し、何人の騎士まで配置すればペイするのかを導き出す理論である。

 以下は5人プレイ時の検証である。 

 スコアは、1周してSTARTに到達すると、ちょうど100点となる。5人プレイで、100点を越えるあたりを勝敗ラインと仮定した。

 初期配置騎士数           :  2人
 1ラウンド平均投入騎士数: (1+2+3+4+5)÷5=3人
 のべ騎士数と得点機会  : 
               1−3ラウンド  2+3×3=11人
               4−6ラウンド  11+9=20人
               7−9ラウンド  20+9=29人
                                     合計 60人

 のべ60人で勝敗ラインの100点を獲得 ≒ 1人1.7点
 ただし、3のアクションカードなどによる、特別決算も行われるため、
 騎士投入は、毎3ラウンド合計で9人以上を目標とする。
 領土には、1人1点以上を目標に騎士を配置し、通常のスコアラウンド(3回)で、人数分得点する。
 さらに、その人数の7割以上の得点を、毎3ラウンド、特別決算やタワーの騎士で獲得する。

 以上の方針に従い、1人1点を最低限のペイする状態と考え、騎士を配置していくのが、ペイ理論による戦い方である。

 ペイ理論のエルグランデG&Kへの適用は、未だ未研究の分野である。
 また、ペイしない領土についての対策も求められる。ペイしないからといってその領土を放置しておくと、「ペイしないけれど得点している」場合よりも、ペイしないのではないだろうか。しかし、それによる泥沼化で、さらなる「ペイしない率」上昇も考えられる。
 

・2位は重要

 1位はあっさり奪われやすいが、2位をつぶすのは難しい(心理的なものか)。
Aragon,  Sevillaの2位は1位と差がなく、良い領土である。
 

・あやしい理論

 自分の騎士を配置する領土は、それぞれ離れていた方が良い。
近いと、キングとの隣接になった場合に、一気に侵略されてしまう。
 

・理想的な1〜3ラウンドの過ごし方

 <1ラウンド>パワーカード 12、アクションカード4か5(できるだけ騎士をばらまく。3のアクションカー  ドで特別決算されそうな領土にも配置すること)
 <2ラウンド>パワーカード 1(次回のキングを確定)
 <3ラウンド>パワーカード 13、アクションカード5(自分の領土を確保、13は後のラウンドでパワーカ
  ード回収を期待する、アクションカード4に“キングを隣接領土に移動”が出ると辛い)
  できるだけ、序盤に騎士をばらまいておくと、特別決算でも得点しやすい。
  1−3ラウンドは最も重要である。
 
 



G&Kの感想

 プレイ前は、得点がどんどん入っていく、大味な拡張ルールという印象があったが、それほどでもない。確かに、今までならセーフティリードといえた差でも、1ラウンド先は闇、大逆転も可能だが、運だけのものではない(7-3の14点はともかく)。領土での得点と、黄金・商品での得点のバランスは、とても考えさせられる。
 アクションカードの追加の結果、2のアクションを選ぶ人がほとんどいなくなってしまった。これについては、改訂版を希望。「1領土の敵の騎士を、全てリザーブに戻す」とか。
 10点以上の大差がついてしまったゲームもあれば、全員(4人)が6点差以内という、クロスゲームもあった。どちらにしろ、実に劇的で面白い拡張ルールと感じた。
 個人的には、異端審問官が好き。毎ターンのおまけが、なんとなくうれしい気分にさせてくれる。初めは、「敵大公1人を異端審問することができる。異端審問された大公は1ラウンドの間、休みになる」という感じの、ひどいアクションかと想像していたのだが、実はマイルド路線。でも、強力なアクションである。
 
 
 


エルグランデ(おまけ)
 プレイヤー紹介 その2

川ちゃん(kawachan)
 ペイ理論提唱者。少年同様、ゲーム説明をしながらプレイしたときは、必ず勝利するという、宇宙軍の伝統を守る者。岡山支部所属ながら、参加率も勝率も高い。

秀さん(shuu-san)
 思わずタワーを開けてしまう豪の者。皆がやろうとしてできなかったタブーを、初めて破った猛将。確かにルールに、タワーを開けてはいけない、とは書いていないが。

細岡君(hosooka-kun)
 ばらまき上手。堅実に2位、3位の得点を獲得している。初めてのプレイで上位に食い込む知将。また、期待値を上回るダイス運をアクションカード運に生かせるかは、今後のプレイで証明される。

宮ちゃん(miyachan)
 最終スコアラウンドにおいて、負けが確定しているにもかかわらず、首位争いの片方の4点本拠地にタワーの騎士を突入させて、(勝敗に影響はなかったが)、大きな恨みをかう。悪あがきともいえないあがき、人の恨みをおそれない行動は天晴の一言。
 
 


「ボードゲーム通信3号予告」

CANDIDATE(キャンディデイト)研究 
     (Avalon Hill, 1991,RESEARCH & DESIGN: Richard Winter)

 −アメリカ大統領選挙の名作ボードゲームです。
  
  お楽しみに!

発行 ボードゲーム通信社

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